癒絡堂ブログ『ちょっとためになる臨床こぼれ話』

機関誌に掲載されました。

新潟市万代の鍼灸院

はり・きゅう・小児はり 

癒絡堂(ゆうらくどう)

院長の佐藤です。

 

 

私は、東洋はり医学会という学術団体に所属しております。

その学術団体には、会員向けに「経絡鍼療」という機関誌があります。

今月号にて、私が以前、本部で症例発表をしました臨床症例発表が掲載されました。

演題は、「月経前症候群の症例について」というテーマです。

これは、平成28年6月の本部例会で発表したものですが、

今だから言える事なのですが、実は、掲載された内容は、その場で原稿を省略して発表したのです。

私自身、ビビリなもので、いざとなる妥協してしまいます。

しかし、治療内容が全く違っているのではなく、

患者様のお身体の状態を診る所を少し言い回しを変えたと言うことだけなのです。

今回は、本来発表するはずでした、原稿をそのまま掲載したいと思います。

難しい表現などがあると思いますが、大まかな経過を見ていただけたらと思っております。

 

 

症例発表

月経前症候群の症例について

 

東洋はり医学会 新潟中央支部 佐藤 聡

 

患者…45歳、女性

職業…主婦

初診…平成28年2月27日

主訴…月経前症候群

現病歴:生理前になると、風邪のような症状と頭重・腹痛・鬱っぽくなる・浮腫みの症状(特に左手の肘から指先にかけて浮腫み、手がグーの状態なり、右手で一本ずつ広げていかないと手が広がらない。)が出てくる。平成22年秋くらいに、お腹がずーと痛く、内科に行ったが何処も悪くない。と言われる。向精神薬のためではないかと言われ、量を少なくした。その後、体中が痛くなり、足に力が入らなくなり歩くのも少し辛くなってきた。色々と病院を受診したが、ばね指や身体表現性障害ではないかと診断される。平成25年に、婦人科を受診すると、更年期と診断される。ホルモン剤を処方され、症状は軽減された。平成27年秋に、医者と相談し一旦中止したら、更年期の症状は以前より良いが、左手の浮腫みと指がグーの状態から伸ばせないのが強くなった。生理が始まると、症状は軽減されていく。生理が始まる前になるとホントに憂鬱になってしまう。

 

望診…身長162㎝、体重は不明。一般的な体形である。眉間は黄色と黒色が混ざったような感じである。尺部の色も黄色と黒色が混じっているように診える。

 

聞診…五音は羽音(マ行が言いやすい)。五声は哭音(カ行が言いずらい)。

 

問診…寝つきが悪く、薬を飲まないと殆ど眠れないので薬を服用している。便は3日以上出ない事があるので薬を服用している。常に硬い。生理前になると甘いものが欲しくなってしまい我慢しようと思っているが、つい食べてしまう。

その他の症状…更年期症状(ホットフラッシュ、動悸、眩暈、耳鳴り(右))、慢性副鼻腔炎、慢性気管支炎、アトピー性皮膚炎、肩凝り、腰痛

鍼灸経験…あり。

既往歴…なし。

 

切診
 切経…左手の肘から指先にかけて浮腫みがあり、手の平に熱感あり。肺経・大腸経ラインに掻き毟(むし)った後あり。足の腎経・脾経・胃経に左右差と虚実の所見あり。
腹診…全体的に冷たく、大腹と小腹を比べると小腹が軟弱である。陰交穴から恥骨上際までの腎の診所陥下して最も虚。右季肋部から臍にかけての肺の診所軟弱で虚。臍を中心に陰交穴から中脘穴にかけての脾の診所軟弱で虚。その他は平と診ました。

 

脉診
 脉状診…
     右 浮、やや数、虚、滑   ゆで過ぎたスパゲッティのような感じ。
     左 やや浮、やや数、虚、ややしょく   右よりはスパゲッティのような感じ。

 

 

比較脉診…左尺中沈めて腎最も虚。浮かせて膀胱実。右寸口沈めて肺虚。右関上沈めて脾虚。浮かせて胃実。その他は平と診ました。

 

 

病症の経絡的弁別…
・浮腫み・頭重・動悸・耳鳴り(右)・腰痛 ・・・腎水経の変動
・生理前の風邪のような症状・肩凝り・アトピー性皮膚炎・慢性気管支炎
 ・・・肺金経の変動
・腹痛・鬱っぽくなる、生理前の甘い物が欲しくなる・慢性副鼻腔炎 
・・・・脾土経の変動
 ・ホットフラッシュ ・・・心火経の変動
 ・眩暈・寝つきが悪い  ・・・肝木経の変動

 

証決定と適応側の判定
 病症は主に上焦にあり、ホットフラッシュがあったりと気が上がりすぎる可能性も考慮に入れたいが、中脉・耳前・臍を診ると右が適応側になると思う。
 証は総合的に判断して、右腎脾相剋証とする。

 

 

予後及び治療方針…主訴及びその他の病症を持っており、薬も色々と服用されているが、気血を調整する事により、薬の量も減らしていければ症状は軽減していくのではないかと思い良とする。ただ回数を要する事と説明し、気が上がりすぎないようにと、ドーゼオーバー注意して治療を進めていかなければいけないと考えました。

 

 

治療経過
第1回目(2月27日)
本治法…定則通りに行くか、脉状から言うと虚燥に当たるので、合水穴も考えられる。逆気ほどの足の冷えは感じられなかったので、定則通り復溜穴を選択する。
銀寸3、1番にて右復溜穴に補法を行いました。検脉するとやや遅になり刺鍼前より診やすくなりました。腎の診所は陥下していましたが、ふっくらしてきたように診えました。腎の脉もしっかりしてきたように診えました。いつもは一鍼事に相生・相剋的に検脉するのですが、薬とかその他治療院に色々と行かれていた事を聞いていたら、検脉せず次に、右尺沢に補法を行いました。その後、左公孫に枯に補法を行いました。この時に肺だけが実っぽくなっているな?と思いましたが、陽経で処置すればよいか?と思い、三焦経の外関に補法、大腸経の温溜穴に枯に応ずる補中の瀉を行いました。脉状は刺鍼前より良くなったのでこれ以上は深追いはしたくないと思い本治法は終了しました。

 

標治法…腰仙部・ナソ・ムノとも虚している所に数か所に補法を行いました。腰仙部に知熱灸を行いました。

脉状・腹診をして、この状態で終了しても大丈夫だと思い、1回目の治療を終了しました。

 

 

第2回目  (3月12日)
翌日、朝起きたら鼻水・くしゃみが止まらなかった。とのこと。この時期だから花粉症ではないか?と。生理が近いのかも。生理前は風邪様症状はいつも出るから生理が始まると治まるかもしれない。と言っておられたが、誤治の可能性は高いと思い、再度考察する。

治療当日は、すごく鼻詰まりがよくなり、鼻声でなくなったし、身体も軽くなったような感じがした。しかし、翌日鼻水・くしゃみが止まらなかったこと。翌々日(2月29日)には、鼻水・くしゃみは無くなった。手の方を診てみると、アトピーが酷くなり引っ掻いたような跡がある。生理について聞いたら、4日後に来た、今回は30周期だったとのこと。

新しく症状が出たのを考えると、肺経の変動に問題があるのではないかと考え、切経・腹診・脉診を行ったが、前回同様の腎脾相剋になってしまう。選穴も考えながら行うことにする。

脉状は、
   右 浮、やや数、虚、滑  少し茹ですぎたスパゲッティのような感じ。
   左 浮、やや数、やや実、ややしょく  硬めのスパゲッティのような感じ。

 

右復溜補法後検脉すると、やや遅になり脉は診やすくなりました。肺の脉が実っぽく診えたので肺は補わず、左公孫を補う。陰分に左右差が無くなったので、陽経の左三里と左偏歴に枯に応ずる補中の瀉を行う。硬さも取れたので、標治法に移る。前回と同様にして、膈兪に右3壮、左2壮の施灸を行う。

 

 

第3回目 (4月2日)
 先週は事情があり、延期しました。治療に問題があったのではなかったと思っていましたが、経過は生理前の症状はそれ程辛くない程度になってきている。手の浮腫みと指のギシギシ感が残るのが気になる。今回は色々とあって中々眠れないのと少し鬱っぽい気がする。

 脉状は、やや浮、やや数、虚  
   右 やや浮、やや数、虚、滑  少し茹ですぎたかな?と思う感じのスパゲッティのような感じ。
                 
   左 やや浮、やや数、虚、ややしょく  少し茹ですぎたかな?と思う感じのスパゲッティのような感じ。
                 
 今回も右腎脾相剋(肺は触らず)で行い、標治法も前回同様に行いました。

 

 

第4回目 (4月16日)
 この時期は花粉症でいつも悩まされていたが、今年は症状が軽く気持ちも晴れやかである。生理は28周期で来ているし、頭痛や鬱っぽいのも軽くなってきている。まだ手の方は気になるが。何よりも睡眠薬を減らしても寝れるようになった。とのことです。

 脉状は、やや浮、やや数、虚  
   右 やや浮、やや数、虚、滑  スパゲッティくらいの太さであるが、前回より触れやすい。
                 
   左 やや浮、やや数、虚、ややしょく  スパゲッティくらいの太さであるが、前回より触れやすい。
                 
 治療は、前回と同様に行いました。

 

 

第5回目 (5月5日)
 手の浮腫みは大分無くなってきたが、まだ指のギシギシ感が残る。

 浮腫み感もないし、掻き毟った後も最近は無くなってきている。

 脉状は、やや浮、やや数、虚

 治療は前回同様で行いました。

 

 

以後は、週2回治療をしています。証は、腎脾相剋または脾腎相剋で行っております。

 

 

 

反省と考察…
 今回は、色々な病院を回り色々と薬を飲まれていた患者さんの症例でした。継続して治療していただくためには、とか薬との関係性とか治療した後も色々と考えさせられた症例でした。初診での検脉を怠ったことが、患者さんに新たな症状を与えてしまったことは、今一度原点にかえって1鍼毎に検脉・検証しなければいけないと思いました。つい新たな症状が出てしまうと深追いしてしまうのですが、2回目以降は検脉・検証に重きをおいて行った事は今後経絡治療を続けていく上での研鑽努力していきたい所です。

 今回は補助療法は行いませんでしたが、今後は補助療法も頭に入れながら治療を行っていきたいと思います。
 諸先輩方のご指導ご鞭撻の程宜しくお願いします。

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